「東大から刑務所へ」(堀江貴文・井川意高 著)
なんと衝撃的なタイトル!
日本最高峰の東大から,犯罪者が刑に服す刑務所へ。
成功者だった彼らが,なぜムショへ行くことになったのか?
そこに至るまで,どのようなドラマがあったのか?
天国と地獄の両方を見てきた彼らは,どう変わったのか?
【目次】
- 【東大から刑務所へ 著者】
- 【東大から刑務所へ なぜ逮捕・有罪?】
- 【東大から刑務所へ 国家権力の嫉妬】
- 【東大から刑務所へ 拘置所派?刑務所派?】
- 【東大から刑務所へ ムショの教え】
- 【東大から刑務所へ まとめ】
【東大から刑務所へ 著者】
井川意高(いかわ もとたか)さんは,大王製紙の創業家に生まれた前会長。
カジノでの使用目的で,子会社から総額約107億円を借り入れたことにより,会社法違反(特別背任)により2013年収監,2016年仮出所した人物です。
【東大から刑務所へ なぜ逮捕・有罪?】
堀江さんは福岡県,井川さんは愛媛県育ち。
ともに地方から東大に入り,ビジネスパーソンとして猛烈に働き,順調に事業を行っていた矢先に逮捕・有罪となった共通点を持ちます。
本文中,2人の「先輩」にあたり,512日間の拘留経験のある作家・佐藤優さんの興味深い話が紹介されています。
いわく,裁判官にとっては,自分の年収よりも大きいカネに関わった人間は全員悪人。
裁判官は国家公務員の中ではけっこうたくさんもらってるほうだけど,それでもせいぜい年収3,000万くらいが上限。
2人の年収には全然届かないから極悪人に見えるのだと。
堀江さんも同様のことを言っています。
「裁判官って,自分より年収やステイタスが上の人間を認めたくないのだと思いますよ。東大法学部を出て司法試験に受かって,裁判官にまでなったオレたち最高のエリートは,年収3,000万円をもらってる。これが日本最高のステイタスだ。これ以上カネをもらってるヤツらは,悪いことをして稼いでるに違いない。世の中のルールに従っているフリをしながら,どこかでズルをしてるんだろう」
【東大から刑務所へ 国家権力の嫉妬】
つまり,国家権力の「嫉妬」によって2人は有罪とされたというわけです。
もちろん全ての国家権力がそうではないでしょうが,あるいはそうなのかもしれません。
なぜなら,当時,堀江さんは大阪近鉄バッファローズやニッポン放送の買収等で,マスコミを相当賑わしていました。そして,ライブドア株の100分割という,今でいう仮想通貨の動きにつながる画期的な株の分割を行いました。
世間を騒がすだけでもけしからんのに,堀江は貨幣発行権という国家の専売特許を脅かした,と国家権力の逆鱗に触れてしまったのです。
ちなみに,堀江さんは,100分割に際しては弁護士チームによるコンプライアンスチェックを徹底的に行っていたので,今でも全く納得していないとのこと。
井川さんの場合,107億円もの巨額の金が動いているので,検察は「只事ではない。背後に巨悪のにおいがする。どこの政治家に流れているんだ!」といきり立った。
ところが,どれだけ詳細に調べても「カジノで溶かしただけ」と判明。
「バクチで107億?勘弁してくれよー」と担当検事に泣かれたそうです(笑)
ちなみに,井川さんも「家族で株の大半を持っているファミリー企業からこれくらい借りても,法的には全く問題ない」と認識していたそうで,判決が下るまでの間に全額返済したそうです!
【東大から刑務所へ 拘置所派?刑務所派?】
逮捕されると拘置所に入り,有罪が確定すると刑務所へ移ります。
拘置所では,基本的にすることがありません。
たまに面会があるくらいで,本を読んだりして静かに時間を過ごすことがほとんど。
一方,刑務所では刑務作業があり,良くも悪くも服役囚との「交流」があります。
堀江さんは「刑務所派」で,孤独に過ごす時間が長い拘置所は耐え難かったそうです。精神的に不安定になり,睡眠薬や安定剤を飲んでいたほど。
井川さんは「拘置所派」で,一人静かな時間が苦もなく,読書がはかどったそうです。
あなたは「拘置所派」「刑務所派」どちらでしょうか?
【東大から刑務所へ ムショの教え】
各章のまとめに,堀江さんと井川さんの「ムショの教え」という名言があります。
獄中経験があり,出所後も第一線で活動する人物がどれだけいるでしょうか?
いくつかご紹介します。
「仕事に勝る娯楽はない」
「人間の嫉妬ほど怖いものはない」
「この国では一歩間違えれば,誰もが刑務所の中に行く」
「ドンペリより運動後の麦茶のほうが美味い」
「くだらない愚痴を言い合えない環境ほど辛いものはない」
「刑務所では前を向いてはいけない。後ろを数えろ」
「シャバでついた余計なアカは1回どこかできれいに落としたほうがいい」
【東大から刑務所へ まとめ】
出所後,2人は対照的な人生を歩んでいます。
堀江さんは,宇宙ロケット開発など実業家として精力的に活動。
井川さんは,クーデターにより一族もろとも大王製紙から追われ,現在は傾奇者のような生活を送っているとか。
おそらく,堀江さんや井川さんが経験した「人生のどん底」とでもいうべき出来事を,多くの人が経験することはないでしょう。
しかし,彼らが経験した「非日常」には,ふだん我々が気づかない多くの示唆が含まれています。
稀有な体験が,2人の人生観をどのように変えたのか?
いや,過酷な体験により天性の気質が浮き彫りになった,というのが真実かもしれません。
GLAYのTERUが刑務所の面会に来た話,ウマイ刑務所メシとまずい刑務所メシ,意外に優しかった鬼の特捜等々おもしろネタも満載で,オススメの一冊です!
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