山口周「劣化するオッサン社会の処方箋」ブックレビュー

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「ビジネス書大賞2018準大賞」を受賞した「劣化するオッサン社会の処方箋」を読みました。

NewsPicksで著者・山口周さんのインタビュー記事を読み,あらすじは知っていましたが大変学びが深く,おもしろい1冊でした。

 

【目次】

【本書のポイント】

最終章に「本書のまとめ」として、以下のポイントがまとめられています。

1:組織のトップは世代交代を経るごとに劣化する

2:オッサンは尊重すべきだという幻想を捨てよう

3:オピニオンとエグジットを活用してオッサンに圧力をかけよう

4:美意識と知的戦闘力を高めてモビリティを獲得しよう

 オッサンが輝かないと社会が良くならない

 どうすれば輝けるか

 なにかを始めるのに遅すぎることはない

【オピニオンとエグジット】

オピニオンとは,おかしいと思ったときには,それを声に出して意見を表明すること。

エグジットとは,オピニオンによっても状況が改善されない場合,そこから退出することです。

 

具体例として,2018年,Google社がアメリカ軍のドローンによる画像認識に協力したことに対して社内で抗議運動が広がり,従業員4,600人が米軍の協力を止めるよう求める嘆願書に署名し,辞職者も出た事例が紹介されています。

 

オピニオンもエグジットもしないということは,上司の言動を支持しているということ。

「これはおかしい!」と思うことがまかり通っている組織に身を置き,オピニオンもエグジットもせず給料を得ていることは,そのおかしい状況に自分も加担し,おかしい上司を支持していることにほかなりません。

 

もちろん,サラリーパーソンである以上,家族を養わないといけなかったり,やむをえない事情があるかもしれませんが,長年にわたってそのような状態に甘んじることはとても危険です。

なぜなら,そのような状態が続けば続くほど,自分自身があれほど「おかしい!」と嫌っていた「劣化したオッサン」になってしまうからです。

 

では,どうすればいいかというと,「美意識と知的戦闘力を高めてモビリティを獲得しよう」ということが解決のカギとなります。

 

ここでは割愛しますが,本書では「会社以外で通用するスキル」「会社の外に開かれたネットワーク」など,詳しい方法が説明されています。

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サーバントリーダーとは】

「いざ,自分がリーダー的地位や立場になった時,組織や社会に対して貢献できることは何か?」への答えとして,「サーバントリーダーシップの発揮」が紹介されています。

 

サーバントとは使用人,召使を意味する言葉ですが,サーバントリーダーシップとは「支援的なリーダーシップ」のこと。

権力に頼る「支配型リーダーシップ」と比較するとわかりやすいと思います。

 

この具体例として紹介されている白瀬矗大隈重信のエピソードが,めちゃくちゃおもしろいのです。

白瀬矗大隈重信

白瀬矗中尉は,国際関係の緊張に伴い,資源確保の必要性から,それまでどこの国も手付かずだった南極大陸のポテンシャルに目をつけ,探検隊を送って調査することを提案。

 

当時,イギリスやノルウェーも同様の計画を立てており,白瀬中尉の提案はきわめて国際感覚に優れたものでしたが,「世迷い言」として受け取られ,「白瀬は南極に行くより病院に行った方がいい」と相手にされませんでした。

 

しかし,そんななか,早稲田大学創設者である大隈重信は,南極探検後援会を発足させて自らが会長を務めたり,政財界や新聞社に支援を呼びかけたり,あらゆる人脈・金脈を総動員して白瀬をバックアップします。

 

ついに白瀬の念願がかない,南極探検に出向するというとき,大隈は次のようなアドバイスを白瀬に送ります。

 

「南極は地球の最南端にある。  南洋でさえあれだけ暑いのだから,南極はさらに暑いだろう。暑さにやられぬよう十分に気をつけたまえ」

 

そのときの白瀬中尉の気持ちは想像にかたくありません。

 

「えええ〜っ!?」

「このオッサン,南極がどういう場所か,ぜんぜん知らなかったの!?」

「それなのに,これほどまでの支援をしてくれたの!?」

 

私なら,「おおおおおーくまさーんっ!!!」と感極まって号泣したと思います(笑)

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【大物とバカ】 

つまり,「サーバントリーダーシップの発揮」と「具体的な計画に関する知識やスキル」はまったく別物であり,無知であってもバカであっても,サーバントリーダーシップは十分に発揮できるということです。

 

イノベーションには大物とバカが必要。とてつもないことを考えるのがバカで,これを支援するのが大物」「とてつもないことを考えるバカは大勢いるけれども,これを支援しようとする大物がいない」

という言葉も,大変考えさせられるものがあります。

【まとめ】

本書の「はじめに」で,「オッサン」とは単純に年代や性別により分類される人々ではなく,以下のような特定の人物像として定義しています。

 

  1. 古い価値観に凝り固まり,新しい価値観を拒否する
  2. 過去の成功体験に執着し,既得権益を手放さない
  3. 階層序列の意識が強く,目上の者に媚び,目下の者を軽く見る
  4. よそ者や異質なものに不寛容で,排他的

 

また,サミュエルウルマンの「青春」が紹介されています。

青春とは人生の或る期間を言うのではなく,心のありさまを言う。

(中略)

年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて人は老いる。

 

あなたは「オッサン」とならず「生涯青春」していますか?

 

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