「達人伝」感想(第167話・秦の謀略)

「達人伝」感想(第167話・秦の謀略)

蒼天航路」の王欣太(キングゴンタ)先生が連載している「達人伝」の感想を紹介します!

今回は「第167話・秦の謀略」です!

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<漫画アクション2020/10/20発売号「達人伝」より>

【目次】

達人伝〜王翦デビュー〜

函谷関防衛線で実力を認められ,抜擢された秦将・麃公(ひょうこう)。

 

その麃公軍が魏の巻(かん)という地を攻め,副官の王翦(おうせん)がビシバシ指示を出し,魏軍を突き崩しています。

 

サラリーパーソン社会でも,王翦のような人はいます。

 

「あいつ,実力はあるのにパッとしないよな…」という人材が,転職や異動により,水を得た魚のように活躍し始めるパターンです。

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<秦軍を指揮する王翦(おうせん)〜漫画アクション2020/10/20発売号「達人伝」より〜>

 

組織で働いていると,「現在より上のポジションの目線で仕事をしろ!」といわれることがあります。

 

立場が上になると,より高く,より広い視野で仕事をする必要が出てくる。

しかし,突然対応することは難しいから,普段からシミュレーションしておけ!というアドバイスです。

 

これはそのとおりで,王翦も,閑職の函谷関時代からイメージトレーニングしていたのかもしれません。

 

一方,「立場が実力を育てる」ことも真実。

 

「現在より上のポジションの目線で仕事をしろ!」というのは,じつは楽をしたい上司の方便ではないか?と思うことがあります(笑)

 

「必要は発明の母」というとおり,人間は必要に迫られれば必死で成長するもの。

 

そして,部下に対する上司の不満のひとつは,視座が低い,視野が狭いことだったりするので,部下が自分と同レベルで仕事してくれたら,これほどラクなことはない!(笑)

 

という意味で,王翦は手のかからない理想的な部下ですね!

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<王翦に感心する秦将・麃公〜漫画アクション2020/10/20発売号「達人伝」より〜>

達人伝〜麃公の鎧〜

一方,麃公さんも出世したため,立場上,重厚な鎧兜を身につけなければならなくなり,慣れない兜に頭が蒸れ,重たい鎧で肩が凝りまくり,かなりお困りの様子です(笑)

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<愛すべき秦将・麃公〜漫画アクション2020/10/20発売号「達人伝」より〜>

 

以前,日本の戦国時代の鎧兜一式を身につけたことがあります。

重さが20キロもあり,これで長時間歩いたり,戦ったりするのは非常にしんどい!

 

着てるだけでジワジワ体力を消耗するので,私の感覚ではせいぜい50代まで。

60歳を超えたら,何時間も移動したり,戦ったりするのは無理!と思いました(汗)

 

中国・春秋戦国時代の鎧兜の素材は,革がメインでしょうか?

金属も入っていると,相当重そうですね!

 

その意味で,後半に出てくる趙の老将・廉頗(れんぱ)は,ただ存在するだけで「あのじいさん,体力すごいな!!」と尊敬の対象だったろうと思われます。

達人伝〜秦の良心・蒙驁〜

王翦の部下である桓齮(かんき),楊端和(ようたんわ)が首狩りを行っていたところ,秦軍総帥・蒙驁(もうごう)は「この戦の褒章は首級を基準にしない」と言ってやめさせます。

 

なぜでしょうか?

 

おそらく,殺してしまってはこれから制圧を図る魏国の民心をつかめない,また殺さず捕虜にすれば兵力や労働力として軍や国を強化できる,という考えによるものでしょう。

 

蒙驁は,王が変わろうと,その王が無頼の徒を登用したり苛烈な考えを表明しようと,「秦は覇業を行うべきである!」という信念が一貫しているんですね。

 

現代のビジネスパーソンにたとえるなら,「社長が変わろうと,めちゃくちゃな指示を出されようと,自分は企業の発展に貢献する仕事を淡々と実行する!」といったところでしょうか?

 

このような信念を持つ人材は,組織にとって稀有で尊い存在とすらいえます。

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<ブレない男・蒙驁(もうごう)〜漫画アクション2020/10/20発売号「達人伝」より〜>

これを読んで,ふと昔のことを思い出しました。

自民党から民主党政権交代した当時,私は中央省庁へ出向して働いていました。

 

15年ぶりに政権与党が変わり,首相が変わり,「これからいったい何が起きるのか?!」「政治家からどんな指示が飛んで来るのか?」戦々恐々とするかに思えた霞が関

 

しかし,意外なことに,周囲の官僚の多くは「政権が変わろうと,我々はやるべきこと,できることをやるまで」と泰然自若としていて,驚きました。

 

蒙驁さんしかり,このような信念を持つ人々こそ,組織の屋台骨であり,良心といえるでしょう。

達人伝〜傷心の信陵君〜

一方,ある意味で,蒙驁と対極をなすのが魏の信陵君です。

 

信陵君は王命により帰国させられた後,ほとんどの食客と住居を手放し,一切の面会を遮絶。

秦の侵攻を受け,出陣命令があっても病を理由に引きこもり,酒に溺れているという噂。

 

これは,秦の謀略により,信陵君と魏王との信頼関係が修復不能なほどに破壊されたため,と考えられます。

 

士は己を知る者のために死す。

 

どれだけ,魏国への愛国心や打倒・秦の思いが強かろうと,まるで自分を理解してくれない,信頼してくれない者の命に従って戦うことは,極めて困難。

 

蒙驁と激烈な一騎討ちを演じた信陵君の退場は残念ですが,その炎は荘丹たちの胸に託されたことでしょう!

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<中原の英雄・信陵君を想う荘丹たち〜漫画アクション2020/10/20発売号「達人伝」より〜>

達人伝〜廉頗のジレンマ〜

そして、廉頗(れんぱ)。

 

こちらも秦の謀略により,趙王との信頼関係は微妙なものになっています。

そのような状況で魏への侵攻を命ぜられ,廉頗は完全に板ばさみ状態。

 

かつて趙都・邯鄲が秦に攻撃され,陥落の危機を助けてくれたのが魏の信陵君。

なぜ,そのような大恩ある魏を攻撃しなければならないのか?

 

しかし廉頗も,趙国に仕えるサラリーパーソンなんですよね。

 

個人の信条として魏を相手にしたくはないが,サラリーパーソンとして王命に従わないわけにはいかない。

 

卑近で小さなたとえになりますが(笑),かつてわが社を助けてくれた企業を買収しようとし,「悪いが受け入れてくれ!反発するな!」と願う担当部長のような心情でしょうか?

 

しかし,見開き2ページを存分に駆使したこの縦長のコマ割りは,迫力があっていいですね!

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<廉頗に呼びかける荘丹〜漫画アクション2020/10/20発売号「達人伝」より〜>

「昨日の友は今日の敵」という仁義なき戦国時代。

 

とはいえ,さすがに魏への侵攻は理屈が通らない!と考えた荘丹たちは,進軍を止めるよう廉頗に呼びかけます。

 

ただ,廉頗としても,趙国将軍として軍を率いて来ている以上,「ああ,私が悪うございました!」と言って撤退するわけにいかない(笑)

 

しかも,間の悪いことに,趙から援軍まで到着したので,ますます引くわけにはいきません。

どうする,廉頗!?

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<ジレンマに悩む廉頗〜漫画アクション2020/10/20発売号「達人伝」より〜>

達人伝〜まとめ〜

廉頗も荘丹たちも,まさに正念場。

もはや一触即発で,開戦は不可避の状況。

趙と魏が戦えば,一番喜ぶのは秦なんですけどね……

 

次回,「第168話・王命を越えて」に乞うご期待です! 

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<覚悟を決める荘丹たち〜漫画アクション2020/10/20発売号「達人伝」より〜>

 

前回のあらすじと感想はこちら!

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