金子哲雄「僕の死に方エンディングダイアリー500日」感想

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著者の流通ジャーナリスト・金子哲雄さんは,2012102日没。

死因は10万人に1人という肺カルチノイド(肺に腫瘍ができる肺がんのような病気)。

41歳の若さでした。

この本は,金子さんが生前,「仕事をしながら死にたい!」と最後の力を振り絞って書き残したものです。

 

現在,私もちょうど41歳。

つい先週まで,肺炎で入院していたこともあり他人事と思えず,何度も涙しながら読み終えました。

 

【目次】

【僕の死に方エンディングダイアリー500日①闘病は正しい?】 

特に印象に残ったのは,

「病気と闘うことが正しく,闘わないことは誤りなのか?」

「生は勝利,死は敗北なのか?」

という一節です。

 

金子さんは,入院治療の道を選ばず,「最後まで大好きな仕事をしながら死にたい」と在宅療養の道を選びました。

仕事やクオリティオブライフ(QOL)を犠牲にしてでも,最後まで病気と闘い完治を目指す選択肢ではなく,治癒するに越したことはないがQOLをより大切にして,積極的な延命治療はしない選択肢を選んだのです。

 

本書でも書かれていましたが,ここは議論の分かれるところでしょう。

金子さんも,「どうして病気と闘わないんだ?最後まであきらめず,もっと頑張れ!」と面と向かって言われたそうです。

 

しかし,金子さんからすれば,もう既に十分に頑張っており,これ以上頑張ることなど,とてもできない。

限りなくゼロに近い治癒の可能性に賭け,あるいは数ヶ月の寿命を延ばすため,QOLを犠牲にして病院でチューブに繋がれながら最期を迎えたくない。

そう考えて,在宅で療養しながら仕事を続ける選択をしました。

【僕の死に方エンディングダイアリー500日②生は勝利,死は敗北?】

はたして,病気と闘うことが正しく,闘わないことは誤りなのでしょうか?

生は勝利で,死は敗北なのでしょうか?

 

もちろん,病気を克服して健康になるに越したことはありませんが,現代医学に限界があるのも事実。

治療が苦しくて,苦しくてたまらず,「こんな思いを続けるくらいなら,死んだ方がましだ!」と思う気持ちも,想像でしかありませんが,わかるような気がします。

 

先日,肺炎で41度の熱を出した時は,息を吸うと肺が痛く,血痰が出て,寝ても覚めてもダッシュを延々と繰り返しているように常に脈が速く,呼吸が荒く,苦しくてたまりませんでした。

病院に行ってもしんどくて,椅子に座っていることすら,ままならなかったほどです。

あのような苦しみが数日間,数週間続くと想像するだけでも,ゾッとします。

【僕の死に方エンディングダイアリー500日③生と死は同じ?】

金子さんは死の直前,「生と死は同じなんだ」とも言われていたそうです。

生と死は同じ。

正直,今の私にはよく理解できません。

「死んだらすべてが終わり」とは思いませんし,生生流転や生まれ変わりもあると思いますが,「生も死も同じ」という言い切る感覚,境地にはとても至っていません。

 

ふと,何かで読んだ闘病記事を思い出しました。

その男性は,何度も何度も繰り返しガンを再発しており,現在も闘病中とのこと。

しかし,気持ちは全く負けておらず,再発する度に「ガンめ,また来たか!」「さあ,今度もやっつけてやるから覚悟しろよ!」と全身全霊で闘い,そのたびに克服してきたとのこと。

凄まじいまでの闘争精神,いや生命力です。

 

その男性は,そうならないことを願いますが,もしかすると今回は治癒できない可能性もあります。

しかし,仮に亡くなったとしても,「勝った!」と言えるのではないでしょうか。

肉体は病魔に負けたかもしれませんが,その精神は最後の瞬間まで不屈で,負けることはなかった。

【僕の死に方エンディングダイアリー500日④魂のベクトル】

死後の生命がどうなるのかよくわかりません。

が,「魂のベクトル」が生きている間も死んでからも一貫して同じ方向へ向かっている意味において,「生も死も同じ」と言えるかもしれません。

 

この男性と金子さんとでは,治療方針は真逆ですが,それぞれの「魂のベクトル」は一貫してぶれておらず,どちらが正解でどちらが誤りということはないのではないか,と思います。

【僕の死に方エンディングダイアリー500日⑤まとめ】

仮に,自分が治療困難な病気になった時,金子さんのように在宅療養を選ぶのか,病院で徹底治療を選ぶのか,今はわかりません。

 

正直,突然の不治の病の宣告や死は怖いです。

もし,そのような事態に直面した時,半生を振り返って,「これまで悔いなく生ききった!」と言えるでしょうか?

日々,そのような過ごし方,命の使い方をしているでしょうか?

 

泣きながら,感動しながら,様々なことを考えさせてもらった,大変貴重な良書です。

 

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