映画「娼年」

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R18指定になっているとおり、大人向けの映画です。

同性の私から見ても、主人公の松坂桃李さんはとてもセクシーと感じたし、女性ファンは悶絶ものでしょう(笑)

ただ、それだけで終わらず、様々な要素が複雑に絡み合い、ラストは清々しささえ感じさせる上質な仕上がりの作品です。

 

【この映画を観てほしい人】

この映画を観てほしいのは、女性やセックスに対する関心・妄想が高く、でもあまりよくわからない、という男子諸君です。

女性の欲望の多様さ、複雑さ、性的嗜好を知って「ええっ?」と目を白黒させ、現実に目が醒めることでしょう(笑)

 

この映画を見た女性がどのような感想を抱くのか、男性の私にはわかりません。

世代や価値観によりますが、半分くらいの女性は引くのではないか、という気もします。

しかし、幅広い世代の女性が登場するので、現在の自分に重ねてみたり、将来の自分を想像したり、考えさせられることが多いのではないか、とも思います。

 

【あらすじ】

日々の生活や女性関係に充実感を感じられず、大学にも行かず、バーでのバイトに明け暮れる主人公=森中領(もりなかりょう)。

ある日、ホストクラブに勤める友人が、美しい女性をバーに連れて来た。

「女なんてつまんないよ」とつぶやく領に興味を持った女性は、彼を闇の世界へ誘っていく……

 

【見どころ①】

何をおいても、松坂桃李さんの「存在感」でしょう。

まず、虚無的でアンニュイな雰囲気。

キレキレのイケメン設定ではなく、限界まで鍛え抜いたアスリートボディとも異なりますが、安定感あるナチュラルで包み込むような表情と肉体美が魅力的です。

 

そして、迫真の演技のセックスシーン。ほとんど演技とは思えず、実際にセックスしているのではないかという濡れ場が、ふんだんに展開されます。

隣りの席の推定60代の男性客も、反対隣りの席の推定20代の女性客も、そして私も、ごくりごくりと生唾を飲み込みながら、スクリーンに観入っていました。

 

【見どころ②】

女性の様々な「性のあり方」「性的嗜好」です。

AVなどを観たことがある男性なら「そんなこともある」と理解できるでしょうが、そのようなものを見たことがない女性は「そんなことあるの?」と驚き、引くかもしれません。

 

「性のあり方」「性的嗜好」は難しい問題です。

他者から見れば理解しがたい、いわゆる「変態」でも、本人にはそれが快感で幸福ということがあります。SMプレイなど、その端的な例です。

 

個人的には、犯罪性がなく、命に関わる危害を加えるものでなく、相手と合意の上であれば、個人の嗜好の範囲内で楽しくやりましょうね、と思います。

ただ、性欲は、人間の強烈な本能のひとつであり、一歩間違えると大変な不幸を招きかねない、という怖さもあります。

 

【おわりに】

性の問題はタブーとされがちです。

本作品は、あくまでフィクションですが、正面から性の本質と向き合った素晴らしい作品と思います。

松坂桃李さんが好きだから」「怖いもの見たさで」というかるい気持ちで観ても、心の奥深くに刻まれるものがきっとあると思います。

 

娼年 (集英社文庫)

娼年 (集英社文庫)