2019年1月15日,小学生の子どもに万引を手伝わせた女性(無職)の初公判が仙台地裁でありました。
宮城県の量販店で,ポケモンのフィギュアなど計120点(計15万円相当)を盗んだ窃盗罪。
母親が弁当を万引きする姿を子どもに目撃されてから,親子で万引きするようになったとのこと。
子どもの供述調書によれば,「店内で欲しい物があると頼んだら,母親に『もらっていこうか』と言われた」。
万引きの手口は,子どもが店内のトイレに商品を持ち込み、買物バッグに入れて持ち帰り。
どこかで聞いたことのある話です。
鑑賞後,やりきれない切ない気持ちになりましたが,まさか同じ事件が現実に起きていたとは衝撃です。
女性は病気のため仕事ができず,子どもの欲しい物を買う余裕がなかったとのこと。
計120点という多さを考えると,「つい,出来心でやりました」で済まされる話ではなく,「子どもを巻き込んだ」という事実が重くのしかかります。
母親は,「(子どもの成長に)悪影響でしかなかった」と謝罪しているとのこと。
なぜ,こんなことになってしまったのでしょうか。
【万引き家族:道徳意識】
「どんなに貧しくても盗みはいけない!」「母親の道徳意識が低すぎる!」と責めることは簡単です。
が,私にはできません。
もちろん,万引きがいけないことは百も承知で,社会の最低限のルールです。
しかし,そういった規範意識を越えて罪を犯さざるをえなかった「より大きな要因」があったのではないでしょうか。
【万引き家族:環境要因①】
客観的には,「女性が病気のため仕事ができず,経済的に余裕がなかったこと」が最大の要因と考えられます。
弁当を万引きしたとのことなので,食事に事欠くほど困窮していた可能性や,女性がシングルマザーだったり,生活保護を受けていた可能性も考えられます。
ただ,経済的に苦しい家庭はたくさんあります。
経済的な理由は非常に大きいものの,親子で万引きするところまで追い込まれた決定的な理由は,それ以外のところにあるように思います。
【万引き家族:環境要因②】
あくまで推測ですが,親子が社会的に孤立していた可能性はないでしょうか。
親戚,友人,知人,支援組織が母親に寄り添ってサポートしたり,楽しく遊べる仲の良い友達が子どもにいたりしたら,違ったのではないかと。
120点は尋常でない数ですが,1点あたりの平均料金は15万円÷120点=1,250円。
子ども用フィギュアばかりでなく,母親のモノが含まれるとしても,著しく高いとはいえません。
もし,親子ともに孤立していなければ。
もし,率直に話し合える,支えてくれる良き友人,知人がいれば。
貸したり,譲ったり,安く手に入れる方法を教えてくれたり,オモチャなしで楽しく遊べたのではないか。
あるいは,周囲のあたたかい善意の目があれば,万引きを思いとどまったのではないか。
そんな気がするのです。
【万引き家族:まとめ】
万引きはれっきとした犯罪であり,許されるものでありません。
検察側は懲役2年,弁護側は執行猶予付きを求刑し,1月23日に判決予定。
たしかに,子どもに万引きをさせるとんでもない母親かもしれませんが,それでも親は親。
子どもの生活,心理的影響なども考えると,母子を引き離すことになる実刑判決が出たらどうなるのだろうと,子どもの将来が心配されます。
なんともいえない切なさ,苦々しさが残る事件です。