「達人伝」感想(第178話・総攻撃開始!)

「達人伝」感想(第178話・総攻撃開始!)

蒼天航路」の王欣太(キングゴンタ)先生が連載している「達人伝」のあらすじと感想を紹介します。今回は,「第178話・総攻撃開始!」です! 

【目次】

達人伝〜蒙驁の撤退命令〜  

扉絵は,秘剣・絶界を発動させる荘丹と,剣を天に放り投げてしまう秦将・蒙武。

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<蒙武と荘丹〜漫画アクション2021/6/1発売号「達人伝」より〜>

 

そう,前回は,天下の大将軍・孟梁さんが秦軍へ突撃。

 

まんまと秦軍の待ち伏せ攻撃をくらって危うし!と思いきや,荘丹たち丹の三侠が「木鶏」を発動。活路を開く展開で終わったのでした。

おさらいしたい方は,どうぞ!

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こちらの見開き絵,荘丹を中心とする丹の三侠の超現実的な雰囲気に,おちゃめな表情の孟梁さんがアクセントとして効いて,いいですね!

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<丹の三侠と孟梁〜漫画アクション2021/6/1発売号「達人伝」より〜>

 

秘剣・絶界の発する圧倒的な「気」によって,道を開く秦軍。

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<秦軍に突撃する荘丹〜漫画アクション2021/6/1発売号「達人伝」より〜>

 

しかし,ここでぶわっと汗が吹き出し,息が上がる。

荘丹とて人の子。

秘技を無限に発揮し続けられるわけではありません。

 

「ば 馬骨?…」と,気づかう孟梁さん,やさしさがにじみ出ています。

 

しかし,この荘丹の攻撃がとどめの一撃となり,秦軍総帥・蒙驁は撤収を決意。

麃公将軍を失い,左右の陣が崩され,本営にまで攻め入られた。

 

だが,まだ緒戦!

この見切り,蒙驁の判断の速さはさすがですね。

 

 

回収できなくなった資金や労力を意味する「サンクコスト」という言葉があります。

 

それまで投入した時間や労力を過大評価し,サンクコストにならないよう,元を取ろうと判断が遅れがち。

 

その判断の遅さこそ,傷口を広げ,将来の損失を拡大させます。

有名なのが,フランスのコンコルド

 

1962年,世界初の超音速旅客機として4,000億円をかけて開発が進められましたが,途中で採算が取れないことが判明。

 

しかし,それまでの投資を惜しんで開発を進めた結果,数兆円という莫大な赤字を抱えて終了したプロジェクトです。

 

状況が良いときは,誰がリーダーを務めようと,うまくいく。

状況が悪いとき,微妙な状況のときこそ,リーダーの判断力が問われます。

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<撤収を指示する秦軍総帥・蒙驁〜漫画アクション2021/6/1発売号「達人伝」より〜>

達人伝〜盗賊軍団の本領〜   

劉邦くん,なんと,秦軍の馬をパクって馬車馬に仕立てていました!

秦軍の馬は,速さも強さも段違い。

 

盗跖の部下・魁(かい)も,敵将・麃公さんの馬をちゃっかりパクっています。

あれ,盗跖の部下3人は劉邦の馬車に同乗していますが,前回,蒙驁さんにやられて馬も失ったんでしたっけ?

 

ともあれ,盗賊軍団の本領発揮。

現代でいえば,オーシャンズ11のような快盗グループが,警察の高級車両を盗んでやろうという話ですね。

 

私はあまり車に興味がないのですが,父が車道楽でした。

 

計30台くらい乗ったはずで,ほとんどが自営業で使う国産車でしたが,子供心に「スカイラインはカッコいいな」「クラウンはフカフカして静かでいいな」と感じた記憶があります。

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<馬泥棒を奨励する劉邦漫画アクション2021/6/1発売号「達人伝」より〜>

達人伝〜蒙武の判断〜 

趙将・李牧,楚将・項燕,そして天下の大将軍・孟梁さんが総攻撃を開始。

 

「敵の勢いは漸減している!」「引くな!陣を上げい!」

うーむ,蒙武は,戦の全体の流れを少々見誤っていますね。

 

たしかに,荘丹の秘剣・絶界の勢いは止まりましたが,連合軍全体の勢いは加速しており,秦軍総帥・蒙驁はすでに撤退を指示。

 

作家の佐藤優さんが,「意欲も能力もあるのは最上,意欲も能力もないのは最低,これは誰も異論がないでしょう。では,意欲があって能力がない人と,意欲はないけど能力がある人,どちらが組織にとって良いかといえば,後者の方が良い。なぜなら,前者は組織に害をなす可能性が高いから」という主旨のことを書かれています。

 

個人的には,意欲があれば能力が伸びる人材もいるのではないか,と思います。

 

ただ,佐藤優さんが所属していた外務省の渉外活動という国家間のパワーバランスに大きな影響を与えるシビアな世界では,「やっていい失敗」はともかく,能力の欠如によって恒常的に生じうる「やってはいけない失敗」を犯した場合のリスクが高すぎるのでしょう。

 

蒙武さん,まさに「意欲があって能力がない」。

一軍を預かる将なのに,まずいパターンですやん!

 

しかも,荘丹の秘剣・絶界によって,右腕が痺れて使いものにならない様子。

 

そして,蒙武に取り入り,守ろうとする部下の腕でぶっ飛ばされて鼻血を出し,庖丁に斬りつけられて浅手を1つ,2つ負いながらも,父・蒙驁が駆けつけて危機を脱します。

 

ああ,蒙武さんは,庖丁との間に飛び込んできたお父ちゃんの馬にもぶっ飛ばされて,せっかくの男前が台無し。

 

凡将から名将へ飛躍するのではと,ひそかに蒙武には期待していたのですが,この描かれ方を見ると,どうやらその目はなさそうです(笑)

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<蒙武を救出する父・蒙驁〜漫画アクション2021/6/1発売号「達人伝」より〜>

達人伝〜全軍撤収

蒙驁が声高らかに,全軍撤収を指示。

「魏国の攻略を中断する!」と,青筋を立てて怒っています。

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<撤収を指示する秦軍総帥・蒙驁〜漫画アクション2021/6/1発売号「達人伝」より〜>

 

軍において,上司の命令は絶対。

軍律違反は軍全体を危険に晒す可能性があり,絶対に守られなければならない。

 

最近,個人の時代,自由の時代といわれますが,たしかにガチガチの命令で縛りつけ,個人を抑圧する組織はよくありません。

 

一方で,個人が好き勝手バラバラに動いたら,大きな成果を生むことはおそらく難しい。

組織には,その全体を貫く思想や一定のルールが必要で,たとえば,人体の細胞ひとつひとつがなんの制約もなく自由気ままに動いたら,組織として生命体として機能しない。

 

ある意味で,軍隊や警察は「組織の究極形態」。

 

その合理性や効率性はもっと評価されたり,仕組みを部分的に取り入れられて然るべきではないかと思います(個人的にあまり関わりたくはありませんが)。

達人伝〜劉邦の攻撃 

それにしても,軍全体を指揮しつつ,個の武を発揮しまくる蒙驁さんのプレーイングマネージャーとしての活躍は,目を見張るものがあります。

一方,それほど出来の良くない子を心配する,子煩悩なふつうの一面もある。

 

無事撤収を図ろうとするそんな蒙驁の前に,ドッカーンと劉邦が登場! 

馬車の上から,ヌンチャクのような距離の長い武器をドガッと叩きつける。

蒙驁さん,「げはッ」と痛そうです。

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<蒙驁を攻撃する劉邦漫画アクション2021/6/1発売号「達人伝」より〜>

 

劉邦は木の柵をぶち壊して登場したようで,これは秦軍の防御柵でしょうか。

意表を突いて現れ,高所から攻撃し,相手の間合いに入らない。

 

これは,劉邦一流の「喧嘩殺法」かもしれません。

しかし,殺気はなく,いたずら好きのやんちゃな表情ですね。

 

さあ,蒙驁は無事撤収することができるのか?

連合軍は追撃し,秦軍全体に痛撃を与えることができるのか?

 

次回,第179話「天地の絶対者」に乞うご期待です!

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