「達人伝」感想(第177話・本能の促す先)

「達人伝」感想(第177話・本能の促す先)

蒼天航路」の王欣太(キングゴンタ)先生が連載している「達人伝」のあらすじと感想を紹介します。今回は,「第177話・本能の促す先」です! 

f:id:a-kikutti:20210522154510j:plain

<漫画アクション2021/5/18発売号「達人伝」より>

【目次】

達人伝〜木鶏〜 

北東の戦場。

 

待ち伏せからの逆落としをかけてくる秦軍に対し、攻め上がる孟梁と丹の三侠。

一騎当千 天下無双たるこの孟梁の武の妨げでしかないわーっ」という孟梁さんを気にかけず、荘丹は「木鶏だ」。

 

木鶏(もっけい)の登場は、久しぶりですね。

 

木鶏とは、まるで木彫りの鶏のように動じず、相手を圧倒する最強の闘鶏のこと。

以前、荘丹は木鶏を試みてうまくいきませんでしたが、「できるはずだ 今の俺たちならば」。

 

木鶏のごとく、秦軍へ突撃する見開き絵、じつにいいですね!

「穏やかに敵陣を切り拓く」のキャッチコピーもいい。

 

気負いも殺気もなく、恬淡かつ豪胆に進むイメージがありありと伝わってきます。

f:id:a-kikutti:20210522154426j:plain

<木鶏の如く攻める孟梁・丹の三侠軍〜漫画アクション2021/5/18発売号「達人伝」より〜>

 

ふと思い出したのが、2020年に引退した中国のバドミントン選手・林丹。

オリンピックの金メダル2回、世界選手権を5回制覇したレジェンドです。

 

かつては、ジャンピングスマッシュはじめ豪快そのもののプレースタイルでしたが、ベテランになるにつれ、淡々として気負いなく、しかし、いつ仕掛けてくるかわからない茫洋さを感じさせるプレースタイルへ変貌しました。

 

対戦選手が、その底が知れないな静かなオーラに圧倒されたと語ることも、しばしばでした。

www.youtube.com

しかし孟梁さん、「見よーーっ わが武名の威を!」「馬骨が足を引っ張ろうと 疾風迅雷 敵陣突破だーー!」と調子に乗る勘違いの激しさ、ノリのよさは素晴らしすぎですね(笑)

達人伝〜項燕vs麃公  

南西の戦場。

楚将・項燕vs秦将・麃公。

 

二人の対決は一見互角に見えますが、麃公の方が上手のようです。

項燕の剣を読んでその動きを封じながら、戦略を意識して陣を押し込んでいく。

 

麃公も決して余裕なわけではなく、項燕の化け物じみた膂力を警戒しながら、「戦略に戻れ!陣に用兵!前を行く端和と合流だ!」と頭をフル回転させています。

 

繊細と大胆、戦闘と戦略を自在に行き来する麃公の才覚は、天性のものでしょうか?

それとも、年の功によるものでしょうか?

戦歴を重ねれば、項燕も麃公のようになれるのでしょうか?

f:id:a-kikutti:20210522154853j:plain

<楚将・項燕vs秦将・麃公漫画アクション2021/5/18発売号「達人伝」より〜>

達人伝〜本能の促す先〜 

麃公はその敏感な嗅覚で、連合軍本隊の動きを察知。

 

「戦略変更!より良き道は 常に本能の促す先にある!」と連合軍本隊に横から突っ込もうとしたところ、秦軍総帥・蒙驁が最前線にいることが発覚。

 

しかも、蒙驁は後ろから斬りつけられている。

 

「え!?」と驚く麃公に、返す刀で斬りかかってくる盗扇。

麃公ほどの手練れであれば、なんなくかわせるはずですが、「ドックン」と体が固まり、首筋にまともに斬撃を受けてしまいます。

 

え、えっ、え〜っ!?

いや、あちゃ〜というべきでしょうか?

 

なぜ、戦場に美女がいる?

なぜ、戦場で美女が戦っている?

なぜ、戦場の美女が攻撃してくる?

 

麃公の「女好き本能プログラム」は、想定外の事態と遭遇して、フリーズしてしまったのかもしれません(笑)

 

「これも…本能ゆえか」「なら 仕方ない…」「だけど…最期に見たものが」「野郎の首じゃなくて よかった…」「ほんとに よかった…」

 

蜂が花の香りに誘われるように、麃公の本能は盗扇を求めて来た。

しかし、その美しい花は、甘い蜜とともに猛毒を湛えていた。

 

そうか、そうだったのか。

なら、仕方ない。

 

この麃公の潔さは、さすがというべきでしょう。

だまされたとか、悔しいという思いは微塵もない。

生涯、女を愛し求め続けたドン・ファン、麃公。

 

女性からすると、「最期に見たのが、女のフトモモ?それでよかった?アホちゃう?」と思うかもしれませんが(笑)、私はそんな死に様もありかな、いや、むしろあっぱれ!と思います。

 

人生は恐ろしい冗談の連続です。

 

それにしても、この戦いで麃公さんが死ぬ展開になるとは、思いもよりませんでした。

連合軍中、最強レベルの項燕でも倒せない麃公を討った盗扇の一撃は、ある意味「達人の技」といえるかもしれません。

 

タイトルの「本能の促す先」、そこには甘美な罠と死が待っていたというのは、おかしくも切ないですね……

f:id:a-kikutti:20210522164723j:plain

<麃公に斬りかかる盗扇漫画アクション2021/5/18発売号「達人伝」より〜> 

達人伝〜絶好調の孟梁

蒙驁軍の本営。

 

秦将・蒙武は、早すぎる敵軍の侵攻に驚きながら、戦国の雄・廉頗が先頭切って突撃してくるのを待ち構えます。

 

しかし、現れたのは廉頗ではなく、見たこともない白髪の馬骨。

ではなく(笑)、疾風迅雷、震天動地、一騎当千、天下無双、尚武の国・趙の雄、炎の烈将たる孟梁さんでした。

 

いや〜孟梁さん、じつに気持ちよさそうですね! 

f:id:a-kikutti:20210522160242j:plain

<絶好調の趙将・孟梁さん〜漫画アクション2021/5/18発売号「達人伝」より〜>

達人伝〜所を得る 

孟梁さんは、所を得た。

 

どれだけ活躍できるか、どれだけ手柄を立てられるかは、じつのところ、その人の能力とはあまり関係ありません。

 

蒼天航路」で、周瑜孫権軍の中では唯一無二の王佐の才だが、曹操軍に入れれば20人のうちの1人の将ぐらいだろう、と劉備が話していた場面があります。

 

諸葛亮にも、おそらく同様のことがいえます。

 

仮に、孔明曹操に仕官していたら、大した活躍はできなかったでしょうが、劉備に仕えたからこそ歴史に名を残すことができた。

 

つまり、中小レベルの組織では目立った活躍ができるけれど、優秀な人材が多い大組織では埋もれてしまう。

 

もちろんこれは、組織規模の大小や人材レベルの高低だけでなく、組織文化との親和性、そして「縁」も大きいと思います。

 

曹操なら、優秀な人材が家にこもって仕官を渋っていると聞いたら、「ベッドごと縛り上げて連れてこい!」とか言いそうですが(笑)、やはり孔明は、三顧の礼を尽くされて劉備に仕えるのが「縁」だったのかな、と思います。

 

さて、もし孟梁さんが秦軍に入っていたら、誇大妄想癖の激しいめんどうくさい人材と評価され、冷遇されていたことでしょう。

 

窓際族の函谷関に配属?(笑)

 

しかし、孟梁は自らの意思で連合軍に加わり、先頭切って敵陣に突っ込み、荘丹たちの理解と支援を得て、秦軍本営に突入。

 

かつては踏んだり蹴ったりえらい目にあった孟梁さんですが、今まさに人生の見せ場、クライマックスを迎えているのではないでしょうか?

達人伝〜秘剣・絶界 

絶好調の孟梁さんの前にスッと出た荘丹が、秘剣・絶界を発動。

 

作者の王欣太先生は、じつは秘剣・絶界的な術を使えるんじゃないか?とひそかに疑っているんですよね(笑)

そうじゃなければ、このような不可思議な絵は描けないのではないかと。

 

さあ、秦軍最後の砦・蒙武くんに秘剣・絶界が発動されたら、戦の大勢は決まりか?

次回,「第178話・総攻撃開始」をお楽しみに!

www.kikutti.com

 

f:id:a-kikutti:20210522161138j:plain

<秘剣・絶界を発動する荘丹〜漫画アクション2021/5/18発売号「達人伝」より〜>

 

【前回のレビューはこちら】

www.kikutti.com

 

あわせて読みたい

達人伝の魅力をこまかく,マニアックに語り始めるとキリがありません!

はじめての方でもわかるよう,ポイントを整理した記事はこちら!

www.kikutti.com

 

【最新刊】 

最新刊はこちら。

 

【達人伝に興味を持った方】

最初からじっくり読みたい方は,こちらからどうぞ!

達人伝~9万里を風に乗り~ コミック 1-29巻セット

達人伝~9万里を風に乗り~ コミック 1-29巻セット

  • 作者:王 欣太
  • 発売日: 2021/04/27
  • メディア: コミック
 

 

王欣太先生の「蒼天航路」などの絵をリアルで観て購入できる唯一の場所=ギャラリー・クオーレ。

ファン必見の聖地でしたが、2020年末にリアル店舗は閉じ、現在はオンラインショップを展開されています!

www.kikutti.com